オリーブオイルと健康
エクストラバージン・オリーブオイルでおなかを温かくしよう
オリーブオイルの生産地は、イタリアやスペインなど地中海沿岸地域が有名ですが、いまや世界各地で、その地域の土壌や気候風土に適した品種が栽培され、独特の風味を備えたおいしいオイルが生産されています。日本では、小豆島や瀬戸内海沿岸、九州に加え、東海、関東など栽培地域は広がっています。その健康効果は広く知られているところです。毎日の食事に、エクストラバージン・オリーブオイルをスプーンに2~3杯摂り入れることで、生活習慣病の予防や腸内環境の改善が期待できます。

■ なによりも健康な血管や血液が大切!
主成分のオレイン酸の働きにより、血液中のコレステロール(注)をコントロールして、HDL(善玉)コレステロール値を下げずに、LDL(悪玉)コレステロール値を下げる効果と共に、活性酸素や中性脂肪の生成を妨げる効果も報告されています。それにより、生活習慣病の原因となる動脈硬化を防ぎ、心疾患、脳血管疾患の予防に効果を発揮します。必須脂肪酸のリノレン酸・リノール酸を必要量含んだバランスのよいオイルです。

■ 体の酸化を防ぐ効果
オリーブオイルにたっぷり含まれたオレイン酸は酸化しにくく、加熱にも耐えることができます。また、果実の中で育まれた各種の成分=トコフェロール類(ビタミンE)、ポリフェノール類などが、抗酸化の大きな助けになると同時に、オリーブオイル特有の風味を醸し出します。脂肪酸とは別のこれらの優良な成分は、エクストラバージン・オリーブオイルの大きな特徴です。

■ おなかにやさしい食べもの
オリーブオイルは胃の滞在時間が短いため、胃酸の分泌は必要最小限で済みます。そのため、食道や胃の粘膜への刺激も少なく、逆流性食道炎、胃酸過多症、胃潰瘍などの予防につながります。そして、小腸では消化されにくいという性質があり、適度な刺激を与えて、腸の活発な働きを促します。また、大腸の内壁を滑らかにし、腸内物をやわらかくして通りをよくします。便秘の予防や解消に大きな効果があります。

■ 認知症の予防効果
エクストラバージン・オリーブオイルにはポリフェノール類の一種であるオレオカンタールという物質が含まれています。良いオリーブオイルを口にしたときの、喉にピリピリと感じさせる成分です。このオレオカンタールは、認知症の原因の一つとされているアミロイドβタンパクを減らす効果があると報告されています。また、抗炎症薬のイブプロフェンと似た特性を持っていることも知られています。
■ 美容とアンチエイジングの効果
果実を搾って作るオリーブオイルは、種子から作る多くの植物油と違い、加熱の工程はありません。27℃以下で搾油をするコールドプレス方式により、熱による酸化を避けることができ、新鮮で滋養に富むエクストラバージンオイルができ上がります。
抗酸化機能の高いポリフェノール類、ビタミンA(カロチノイド)、活性酸素を抑えるビタミンE(トコフェロール)など天然由来の多くの微量成分がバランスよく体を巡り、健康でしなやかな体を維持します。

また、ヒトの皮脂の40%ほどの成分はオレイン酸ですので、肌との相性もよく、昔から石鹸や美容化粧品などにも広く使われています。つやのあるきめ細かい肌を保つには、毎日の摂取はかかせません。

(注)コレステロールとは
コレステロールは、脂質の成分のひとつであるステロールに属し、細胞膜の成分をはじめ、胆汁酸、副腎皮質ホルモン、性ホルモン、ビタミンDの合成材料として生命維持に重要な役割を担っています。善玉、悪玉と呼びますが、これらは全く別のものではなく、元は一つの兄弟のようなものです。HDLコレステロールは、体の中の余ったコレステロールを拾い集めて、肝臓に戻す役割をします。血管はきれいになるという解釈ができます。ゆえに善玉といわれます。一方のLDLコレステロールは、肝臓からコレステロールを持ち出して、体内の細胞に届ける役割をします。そのため悪玉といわれます。
地中海式ダイエットとオリーブオイル
■ 地中海式ダイエットとは
地中海式ダイエットは、地中海沿岸地域の人々の生活や食糧生産の知恵・伝統から生まれた食事法です。1970年代に食事と心疾患の関連を研究したアメリカミネソタ大学のアンセル・キーズ博士の論文が、その考えの元となりました。研究当時、経済的に豊かであった北米や北欧では栄養価の高い美味しいものをたくさん食べていました。しかし、その一方では心臓病での死亡率がとても高いという結果も現れていました。一方、地中海沿岸は、ヨーロッパの中でも比較的貧しい地域でしたが、心臓疾患による死亡率は低く、富める国で栄養豊かな食生活を送っている人々よりも、貧しい地域の食生活のほうが健康にはよかったという結果は、とても皮肉なものでした。

このようなことから、摂取する油の違いが注目されました。地中海沿岸では、牛や豚の肉よりも、魚介類・パンやパスタ・そして野菜や豆類をたっぷりのオリーブオイルで調理し、チーズやヨーグルトの発酵食品、果物、ワインを適度に摂るという食生活が根付いていました。肉などの飽和脂肪酸中心の食生活よりも、オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸をメインにした食生活により、コレステロールや動脈硬化のリスクを未然に防いでいたと考えられました。

調査に打ち込んできたキーズ博士はアメリカ人ですが、2004年に100歳と10か月で亡くなるまで、晩年の30年間を南イタリアで暮らしました。自らの研究である地中海式ダイエットを実践し、証明した生涯でした。博士の死から6年後の2010年、地中海式ダイエットは、フランスのガストロノミー(美食術)、メキシコの伝統的食事、クロアチアのジンジャー・パン作りと共に、ユネスコの無形文化遺産に食文化として初めて登録されました。


キプロス(AGROS,CYPRUS)、クロアチア(HVAR and BRAC,CROATIA)、スペイン(SORIA,SPAIN)、ギリシャ(CORON,GREECE)、イタリア(CILENTO,ITALY)、モロッコ(CHEFCHAOUEN,MOROCCO)、ポルトガル(TAVIRA,PORTUGAL)の食生活が紹介されています。冒頭の一編の詩、哀愁を帯びた音楽、郷愁と食欲を誘います。


■ 地中海式ダイエットのピラミッド
地中海式ダイエットを図式したピラミッド図がこちらです。

ピラミッドは、食材を3つのパターンに分けています。<毎日摂取する> <週に数回摂取する> <月に数回摂取する>これにあてはまる食材を献立の基本にします。ポイントは、穀類、緑黄色・淡色野菜、豆類・豆類加工品などの植物性の旬の食材と発酵食品を中心に、魚介類、肉類の動物性の食材を、彩りよくバランスよく食べることです。これは、和食の献立とも共通するところが多いものです。必要な脂質は、オリーブオイルなどの良質の植物油で賄うことが大切です。

大地の魔法のように栄養価と健康効果が高いオリーブオイル。その風味はマイルドからスパイシーまで千差万別です。果実が原料のエクストラバージン・オリーブオイルの風味を表すのにフルーティという言葉が使われます。リンゴ、バナナ、アーモンド、トロピカルフルーツを感じることがありますし、トマトや若葉など野菜や青草の風味も感じます。また、のどを通るときに強く感じるのは、スパイスやハーブの味と香りです。オリーブオイルがあれば多くの味付けは必要としません。食材と合わさることで、複雑で豊かな旨みを感じられる自然の調味料でもあります。 お気に入りのオリーブオイルを見つけて、おいしい食生活をお楽しみください。